はじめにMicrosoft Fabric では、各ワークロードに Copilot が組み込まれており、データの開発や分析を自然言語で手伝ってもらえます。幅広く便利な一方で、具体的にどんな活用ができるのかは意外と整理されていません。そこで本記事では、Copilot in Fabric を使うための要件(容量・リージョン・テナント設定)を押さえたうえで、各ワークロードでどんなCopilotによる支援を得られるのか、実際の画面とともに見ていきます。最後に、見落とされがちな CU 消費とコストの勘所にも触れます。Microsoft Fabricで利用できるCopilotとは?今回扱うMicrosoft Fabricで利用できるCopilot…通称"Copilot in Fabric"一言でいうと、「Microsoft Fabricの中で、データ分析やレポート作成などをAIに手伝ってもらうための機能」のことです。いわゆる"通常のCopilot"と同様に利用者の開発・運用業務を身近に・セキュアに・シンプルにアシスタントしてくれます。このため、Fabric上のデータ基盤開発者からBI作成者、BIユーザーなど、Fabricに関わるすべてのステークホルダーの作業を支援可能です。(以下イメージ)Fabric上で行うデータを「加工する」・「分析する」・「可視化する」・「説明する」といった一連の作業を、生成AIが支援してくれるというイメージです。ここでは「Fabric Copilot」という1つの独立したAIツールがあるというより、Fabricの各機能にCopilotが組み込まれていると考えるとわかりやすいです。例えば、各アイテムではこんな感じ。Data Factory → データ連携・変換を支援Data Science → データ分析・コード作成を支援Data Engineering → データ処理やコード作成を支援Data Warehouse → SQL作成などを支援Power BI → レポート・分析・要約などを支援という感じです。本当に様々なところで使えます。利用要件FabricのCopilotを使う前提は、大きく「容量」「リージョン/データ境界」「テナント設定」の3つに整理できます。以前言われていた容量サイズF64以上という条件は現在は無くなっていて、現在は以下のようになっています。区分要件補足容量(SKU)有償のFabric容量F2以上、または Power BI Premium P1以上Pro / PPUワークスペース単体では利用できない容量の種類有償SKUのみトライアルSKU・トライアル容量はサポート対象外リージョンCopilot対応リージョンに容量が存在している対応外リージョンだとCopilotは利用できないテナント設定管理者にてテナント上で必要な有効化設定ができている管理者がオフにしていれば使用できないもう1つ重要な点として、「データ境界」に関する設定です。テナントまたは容量が米国・EUデータ境界の外にある場合、Copilotは既定で無効化されており、Fabric管理ポータルで「Azure OpenAIに送信されるデータがテナントの地理的リージョン・コンプライアンス境界・ナショナルクラウドの外部で処理されることを許可する」というテナント設定を有効にする必要があります。日本テナントはこれに該当するため、この設定を明示的にONにしないとCopilotが動きません。(以下実際のテナント設定の画面)ちなみにこちらは、セキュリティグループでの段階的ロールアウトが推奨されています。計画なしにテナント全体で有効化すると容量消費が跳ね上がるリスクがあるため、特定グループ・ワークスペースに絞って開始するのが安全です。具体的なユースケースここからは、実際に「どのアイテムで、どんなプロンプトを投げると、何が返ってくるのか」をワークロードごとに見ていきます。Copilot は各アイテムの編集画面に溶け込んでいるので、基本的には「作業中の画面で自然言語をそのまま打つ」だけです。Data Warehouse:T-SQL を書いてもらうSQL を書き慣れていない分析者や、テーブル構造をまだ把握しきれていないメンバーが恩恵を受ける領域です。例えば、以下のウェアハウスのサンプルデータに対して、Copilotを開き、以下のプロンプトを投げてみます。(以下画像にて画面イメージ)「trip テーブルに対して、1回の乗車あたり何人の乗客が乗車しているか確認するクエリを書いて」上記画像でもわかる通り、こんな感じで帰ってきました。このクエリは、tripテーブルから各乗車(Trip)ごとの乗客数(PassengerCount)を確認するためのものです。Tripを一意に識別するために、DateIDやMedallionIDなどの複数カラムの組み合わせを利用しています。最初の100件が表示されるので、全体の傾向を把握しやすいです。(以下コード)次のアクション:1. クエリを実行して、PassengerCountの分布や値の妥当性を確認しましょう。2.必要があればWHERE句で日付や特定の条件を追加して絞り込みを行ってみてください。3. 他の分析用に、この結果をビューテーブルとして保存することも検討できます。他にも集計や分析したい観点はありますか?生成されたコードを実行してみましたが、しっかりとできていますね。逆にクエリを説明させることも可能です。以下画像はストアドプロシージャに対して、「クエリの説明」を実行した様子です。英語ではありますが、ワンクリックでクエリの中にコメントを入れてくれます。コメントがあると、コードの意図が一目で伝わるのでいいですよね。今回サンプルとしてCTEを重ねウィンドウ関数でランク付けするようなストアドプロシージャを作っていますが、パッと見では何をしているか追えません。「ここは州×都市で集計」「ここで売上ランクを振る」と一言添えるだけで、引き継いだ人はもちろん、Copilotの解説や修正の精度まで上がります。書くコストは小さいのに、読む・直す・任せるが一気に楽になります。ノートブック:コードの生成・修正・要約次はノートブックです。Data Engineering / Data Science分野として、PySparkや Pythonのコードまわりも一通り任せられます。やりたいことプロンプトのイメージコード生成「〜を集計する PySpark を書いて」 コード説明「このセルが何をしているか説明して」エラー修正「このエラーの原因と直し方を教えて」ドキュメント化「各セルにコメントを付けて」例えば、Fabricのノートブックで以下のように、セル単位でコードを生成することが可能です。セルのCopilot指示に「lh_copilottest の nyc_taxi_yellow_2020_1 テーブルを Spark DataFrame に読み込み、先頭5行を表示して」と指示しています。次に別のプロンプトを投げてみましたが、列名を正しく認識できておらず、誤ったコードが生成されエラーになりました。そこでエラーの修正もCopilotにお願いしてみます。以下のようなイメージ。このあとバッチリ実行できました。また、ノートブック全体要約も便利です。指示されたノートブック全体の内容をAIが要約し、先頭にMarkdownで追記しています。他メンバーが書いた長いノートブックにキャッチアップするときに便利ですね。Power BI:メジャー・レポート・要約次はBIです。おそらくFabricの中でCopilot が一番幅広く使われているのが Power BI です。返ってくるものがコードだけでなく「レポートそのもの」や「説明文」まで及ぶのが特徴です。例えば、「セマンティックモデルにおけるDAXメジャーの生成」です。まず現在自作しておいたモデルに対して、「Suggest improvements to this semantic model」と尋ねてみます。すると、長文でアドバイスをいただけました。この大量アドバイスにあったうちの1つから代表して「平均所要時間メジャーを trip_count で重み付けした加重平均として作ってください」と投げてみます。私が先にメジャーを登録してしまったのですが、必要な確認・作成・修正などを以下のように支援してくれます。次に「レポートページの生成」です。白紙のページに現在データセットを登録している状態です。ここからレポートを作るため、「このモデルを使って、NYCタクシーの売上概要レポートを1ページ作ってください。主要メジャー(総売上、総トリップ数、チップ率、平均走行距離)をKPIカードで並べ、dim_date で月別の総売上推移、dim_zone の Borough 別の総売上内訳を入れてください。」と投げてみます。なんとここまで一瞬で作ってくれました。僕はプロンプトを投げただけです。ここでこの大きさのカードが必要?という疑問や、色・フォントのカスタマイズ性など、どこまでAIができるかというとシンプルなタスクのみという印象はありますが、初期の土台としては十分なように見えます。他にも、「データの要約(ナラティブ)」としてレポートの内容を文章で要約してくれる機能もあります。例えば、「このページの主要な傾向を3つの箇条書きで、経営層向けにまとめてください。」と投げて、重要な点のみをテキストにすることもできます。(以下イメージ)Real-Time Intelligence:KQL を書いてもらうリアルタイム分析では、自然言語の質問を KQL クエリに変換してくれます。こちらはMicrosoft公式の参考画像のみを貼っておきます。Copilot タブ:ワークスペースを横断して尋ねるここまではアイテムの編集画面に埋め込まれた Copilot を見てきましたが、Fabric には左のナビゲーションバーから開くスタンドアロンの Copilot タブもあります。特定のノートブックやレポートを開いていなくても、Copilot 単体の画面で「どこに何のデータがあるか」を横断的に尋ねられるのが特徴です。インラインの Copilot が今開いているアイテムの中での作業を支援するのに対して、こちらはワークスペースをまたいで、目的のレポートやデータを探し出す入口として使います。できることは主に次のとおりです。特定のトピックに関連するレポートやデータを横断的に探す見つけたレポートやデータの内容を要約するCopilot で何ができるかをその場で尋ねる例えば、レポートを探してもらう「タクシーの利用者数に関するレポートを探して」と聞いてみると、候補をピックアップ。次に「ワークスペースにあるデータの概要を、チーム共有用に要約して」と言って、レポートを要約させてみます。すると概要としていくつかレポートの特徴を持ってきてくれました。ちなみにこのスタンドアロン Copilot タブは「探す・要約する」入口に特化していて、アイテム内で手を動かす系の作業はできません。できないことを整理すると次のとおり。成果物を作る・変更する:レポートページの新規作成やビジュアル追加、DAX メジャーの作成、SQL やコードの生成といった、これまで本文で見てきた"作る"系はここではできません。それらは各アイテムのインライン Copilot 側の役割です。データそのものを加工・書き換える:テーブルの変換やパイプライン実行など、データに手を入れる操作はできません。あくまで既存の資産を探して読む・要約するまでです。横断的な分析クエリを投げる:「全ワークスペースの売上を合計して」のような、複数データをまたいだ集計・分析はできません。個々のデータへの本格的な分析は、対象を開いてから行う形になります。見つけたレポートをその場で編集する:検索で目的のレポートにたどり着けても、この画面から中身を直すことはできず、開き直して操作する必要があります。ざっくり言うと、「案内係」であって「作業員」ではないイメージです。どこに何があるかを教えてくれて、要約もしてくれますが、実際に作る・直す・重い分析をかけるのは各アイテムに入ってから、という住み分けです。Copilotに聞いてみてもこの通りです。利用時の注意:CU 消費とコスト最後に、実務で論点になるコストの話です。Copilot の利用は Fabric 容量の CU(Capacity Unit)を消費します。1クエリごとの追加課金がある方式ではありませんが、使えば使うほど容量全体の使用率に効いてきます。つまり「Copilot を有効化した = 別枠で課金が増える」のではなく、「既存の容量の消費が増える」という捉え方が正確です。このため、実務では次の2点を押さえておくと安全です。段階的にロールアウトする:テナント全体でいきなり有効化すると、想定外の容量消費につながります。セキュリティグループやワークスペースを絞って始めるのが定石です。容量メトリクスで消費を観測する:Capacity Metrics アプリで、Copilot 有効化の前後で使用率がどう変わるかを見ておくと、スロットリングの予兆を早めに拾えます。なお、Copilot の消費を特定の容量に寄せて管理したい場合は、2026年2月から使えるようになった Fabric Copilot 容量(Copilot capacity) を割り当てる方法もあります。消費を1つの容量に集約・分離できるので、部門横断で使うときのチャージバック設計がしやすくなります。まとめFabric の Copilot は、Data Factory、Data Warehouse、ノートブック、Power BI と、ワークロードごとに散らばっているように見えますが「最終的に何を返すか」という視点で眺め直すと、①コードを書く、②説明・要約する、③成果物を組み立てる、の3つに収まります。コードを書く:T-SQL、PySpark、KQL、DAX メジャーなど、自然言語から実行できるクエリ・コードを生成説明・要約する:既存クエリへのコメント付け、ノートブック全体の要約、レポートのナラティブ成果物を組み立てる:KPI カードやグラフを配置したレポートページそのものどのワークロードでも共通しているのは、Copilot が白紙からの作業を「たたき台へのレビュー」に変えてくれる点です。特に KQL や DAX のように書き慣れていない言語ほど、下書きが出てくる恩恵は大きくなります。一方で、今回のデモでも列名の誤認識でコードがエラーになる場面がありました。Copilot の出力はあくまで下書きであって実行・検証してから使うことが前提です。強力ですが、最後に確からしさを担保するのは人間の役割、という距離感で付き合うのがちょうどよさそうです。なお、本記事で触れた機能にはプレビューが含まれます。導入判断の際は以下公式情報で最新情報や注意点をご確認ください。出典Copilot の全体像・利用要件Overview of Copilot in Fabric - Microsoft LearnEnable and configure Copilot in Microsoft Fabric - Microsoft Learn(容量・リージョン・データ境界・テナント設定)リリース状況(GA / プレビュー)Release Status of AI and Copilot in Fabric - Microsoft Learnワークロード別Copilot for Data Warehouse (preview) - Microsoft Learn(T-SQL 生成・Explain/Fix)Copilot for Data Engineering and Data Science (preview) - Microsoft Learn(ノートブック)Overview of Copilot for Power BI - Microsoft Learn(メジャー・レポート・要約)コスト・容量Copilot consumption, usage, and billing in Fabric - Microsoft Learn(CU 消費・トークン課金)Fabric Copilot capacity - Microsoft Learn(Copilot 容量)宣伝CLOVE合同会社は、企業のデータ活用を推進するための戦略策定、データ基盤構築、データ分析、AI活用支援を提供するコンサルティング会社です。 データ活用の専門家として、マーケティング、営業、業務効率化など幅広い領域で支援を行っております。貴社の課題や目的に応じた最適な設計をご提案しますので、ご興味がありましたらぜひお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。